『うつわや料理帖』/あらかわゆきこ/株式会社ラトルズ/2006年刊 『うつわや料理帖Ⅱ』/あらかわゆきこ/株式会社ラトルズ/2010年刊 週に何度か鎌倉のカフェバーでアルバイトを始めた。人生初の飲食業は覚えることだらけで、最近は家でもドリップ用のケト…
『装丁物語』/和田誠/中公文庫/2020年刊 日本で流通する書籍にバーコードが印刷されるようになったのは、だいたい1990年頃だそうだ。私は小学4年生か5年生くらいだったはずで、だからまあ自分のお小遣いで本を買うようになる頃には、あって当たり前のもの…
今週買った本、のことでも書こうかと思っていたけれど……。 福田和也さんが9月20日に亡くなったそうだ。訃報にふれて、自分に何かやるべきことがあるだろうかと少し考えたけれども、葬儀に参列したいとは思わないし、連絡するべき知友もない。私の生きる世界…
『合本現代俳句歳時記』/角川春樹 編/角川春樹事務所/1998年刊 俳句の集まりに少し関わることになって久しぶりに歳時記を手に取ってみると、あまりにも状態がひどくて少したじろいでいる。意図して付けた折り皺とそうでない折り皺が無数に入っているのは…
『なつかしい本の話』/江藤淳/ちくま文庫/2024年刊 最近どうも、ちくま文庫ばかり買っているような気がする。 生きているうちに司馬遷の『史記』を読んでみようかと思い立ったのが数ヶ月前。現代日本語訳としてはちくま文庫版が良さそうだと当たりをつけ…
『洲之内徹ベスト・エッセイ2』/洲之内徹/椹木野衣 編/ちくま文庫/2024年刊 大学で在籍していたゼミでは学期中に一回か二回、外部から講師を招いてのゲストレクチャーがあった。ゲストは作家や漫画家や舞踏家など、幹事をする学生によってさまざまで、…
『日本の家郷』/福田和也/洋泉社新書/2009年刊 『日本人の目玉』/福田和也/ちくま学芸文庫/2005年刊 「小林秀雄賞を擁する新潮社が洲之内徹の本を絶版にしたことは、批評的ではなかった」と前回書いた後で、なんだかバカなことを書いてしまったなと思…
『洲之内徹ベスト・エッセイ1』/洲之内徹/椹木野衣 編/ちくま文庫/2024年刊 御社は新しい本を作ることより今ある本を売ることを考えたほうがいいと思いますよ、と新潮社の人に言ったことがある。もう十年以上前のことだ。新潮社といえば歴史も知名度も…
『新源氏物語』一 改版/田辺聖子/新潮文庫/2015年刊 『方丈記』/鴨長明/浅見和彦 校訂・訳/ちくま学芸文庫/2011年刊 源氏物語といえばイケメン貴公子があちこちで女をたぶらかしては泣いたり泣かせたりするお話でしょ、私は別にいいや、と敬遠してい…
『私たちの世代は』/瀬尾まいこ/文藝春秋/2023年刊 『戒厳令下の新宿 菊地成孔のコロナ日記 2020.6─2023.1』/菊地成孔/草思社/2023年刊 例の感染症の流行によって、従来ありえたはずの学校生活を失った子どもたち。『私たちの世代は』は、渦中の彼らの…
個人的14歳向け課題図書 中学二年生の甥っ子に、姉が手を焼いているらしい。学校のプリントを失くしたとか宿題を放ったらかしにしているとか、親としてヤキモキする気持ちはわかる。一方で祖父母や叔母(私)の前でそういう話をされて、余計にふて腐れる甥っ…
『新詳説 国語便覧』/東京書籍/1995年刊 『司馬遷』/武田泰淳/中公文庫/2022年刊 私が高校生だった頃の国語の教科書は「現代文」と「古文・漢文」の二種類だった。それが二、三年前に大幅に改変されたらしい。 小説を読んで登場人物の心情を読み取ると…
『一人称単数』/村上春樹/文春文庫/2023年刊 一人称単数の短編小説を、村上春樹さんは過去にいくつも書いている。この短編集に収録された八編には「”僕”もしくは”私”が語る物語」という以外にも、それが小説家・村上春樹である(と思わせる)という共通点…
『コスモポリタンズ』/サマセット・モーム/龍口直太郎 訳/ちくま文庫/1994年刊 お世話になっていた先生の自宅からサマセット・モームの文庫本を十冊くらい引きとった経緯については、以前書いた。代表作とされる長編小説と、晩年に書かれたエッセイ集と…
『ウォーホルの芸術 20世紀を映した鏡』/宮下規久朗/光文社新書/2010年刊 アンディ・ウォーホルといえばアメリカン・ポップアートの巨匠で、日本国内でもわりと頻繁に大規模な回顧展が催されている。でも、私は観に行ったことがない。画集を開いたことも…
『手軽 あっさり 毎日食べたい あたらしい家中華』/酒徒/マガジンハウス/2023年刊『青椒肉絲の絲、麻婆豆腐の麻 中国語の口福』/新井一二三/筑摩書房/2023年刊 どうして私は本を買うんだろう、と思うことがある。 たとえばブックカフェで読みきれなか…
『万能! にんにくみそ床レシピ』/松田美智子/河出書房新社/2014年刊 何度か利用した通販サイトで「水抜き不要のぬか床容器」なるものを発見したのは一年くらい前だった。冷蔵庫内の幅と奥行きを測ってサイト記載の寸法を確認、「買ったけど使わない」な…
『ポートレイト・イン・ジャズ』/和田誠・村上春樹/新潮文庫/平成16年刊 ジャズという音楽には気ちがいじみた愛好家がたくさんいて、派閥を形成して隠語で通じあったりウンチクを競いあったりしている、という勝手なイメージを長いこと抱いていた。歴史も…
『〈オールカラー版〉美術の誘惑』/宮下規久朗/光文社新書/2015年刊 二、三ヶ月前、ワインを飲みながら絵を描くというワークショップに参加した。美大生が講師をする体験型アートショップというもので、その日は6号のキャンバスにパレットナイフを使って…
『本屋になりたい この島の本を売る』/宇田智子/ちくまプリマー新書/2015年刊 『増補 本屋になりたい この島の本を売る』/宇田智子/ちくま文庫/2022年刊 フリーライターをしていた頃、「編集者はお客さまなんだから」とたしなめられたことがある。相手…
『女たちよ!男たちよ!子供たちよ!』/伊丹十三/文藝春秋/昭和54年刊 学生時代にアルバイトをしていた本屋では従業員向けの割引制度があって、会計の際にレジでネームプレートを見せると、一割引きにしてくれた。当時の私はこれがとっても嬉しくて、それ…
『殺人者たちの午後』/トニー・パーカー/沢木耕太郎 訳/飛鳥新社/2009年刊 『死刑』/森達也/角川文庫/2013年刊 一度読んだだけでは消化不良で、そのうちまた読もうと思ったものの、棚に挿したまま長いこと開かなかった本がたくさんある。たとえば『殺…
フェア「男と女と、フェミニズム」を検討中。 先週に引き続き出店の準備を進めながら、一つ気がかりなことがあった。案内文に次のように書いてある、「栞とペンを用意するので、出品する本のコメントを書いてください」。10時くらいに集合して、11時オープン…
「出版の明日はどっち?」フェアを検討中 引越しから二年近く経って本棚に本が入りきらなくなってきたので、一箱古本市というものに参加してみることにした。一箱古本市は東京の谷根千(谷中・根津・千駄木)から発祥してここ二十年くらいでほつほつと全国に…
『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』/スティーヴン・ウィット/関美和・訳/ハヤカワノンフィクション文庫/2018年刊 『誰が音楽をタダにした?』は1990年代から2010年代にかけて、音楽の流通形態がCDからストリーミング配信へと移り替…
ブログを始めてだいたい一年になります。だからというわけではないけど、タイトルを改めました。 (旧)捨てられない本 (改)ライターズブルース 当初は、何を書くか毎回考えるのは大変そうだなと思ったことと、ちょうど引越しで大量に本を処分した後だった…
『圏外編集者』/都築響一/朝日出版社/2015年刊同/ちくま文庫/2022年刊 文学フリマというイベントが初めて開催された年、私が在籍していた大学のゼミでも、作品集を出品しよう、ということになった。自分たちの書いた小説(のようなもの)を一冊にまとめ…
『女の絶望』/伊藤比呂美/光文社文庫/2011年刊 兄や姉と一緒に『ルパン三世』の再放送を見ていた頃、オープニングソングで「お~とこには~じぶんの~セェカァイがぁある!」というBメロに差し掛かると、子ども心に「女にはないのかなあ」と思ったものだ…
『文車日記−私の古典散歩−』/田辺聖子/新潮文庫/昭和53年刊 たまには最近買った本の話を。と思ったわけではないけれど、小池昌代さんの訳による『百人一首』(河出文庫)がおもしろい。正月に甥っ子や両親とこたつを囲んでカルタ遊びをした後、本屋で見かけ…
『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』(上)(中)(下)/ゲーテ/山崎章甫訳/岩波文庫 編集者と原稿のやりとりをしていると、たまに「だったら自分で書けば」と思うことがあった。従ったほうが記事が良くなると思えば従うし、注文を受けての原稿だからなるべ…