ライターズブルース

読むことと、書くこと

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

修行の一例

『モンテーニュ エセー抄』宮下志朗編訳/みすず書房/2003年刊 ライター時代に懇意にしていた作家の配偶者のもとに、あるとき匿名の怪文書が届いた。「内部告発」と題されたメールが四通、その作家の異性関係を暴露した内容だった。当然のことながらいった…

草花のように草花を

『植物画プロの裏ワザ』/川岸富士男/講談社/2003年刊 中学生になった甥っ子が将来の夢を聞かせてくれた。画家になりたいのだという。小さい頃から絵を描くのが好きで、私を含む親戚みんながその絵を褒めてきたのだが、ちょっと褒めすぎたかもしれない。数…

記憶の栞

『災間の唄』/小田嶋隆/武田砂鉄編/サイゾー/2020年刊 持ってきたと思っていたのに、引越し後に出てこなかった本の一つが阿佐田哲也の『麻雀放浪記』だ。2011年の春に全四巻を一気読みした思い出がある。地震と津波と原発事故を巡って、「自粛」と「風評…

裏と表とその中身

『うらおもて人生録』/色川武大/新潮文庫/昭和62年刊 飲み屋のカウンターで背後を人が通り過ぎる気配がした。カウンターの中の人が「ありがとうございました」と声をかけたが、相手は無言のまま立ち去ったようで、中の人は眉を八の字に下げて呟いた。 「…

転職者の見た景色

『高橋是清自伝』上下/高橋是清/上塚司編/中公文庫/1976年刊 中小企業の広報部門に在籍していたことがある。『高橋是清自伝』はそのときに資料として読んだ。経営者向けのコンサルティング・サービスを提供する会社で、広報部門では顧客向けの会報誌やメ…