ライターズブルース

読むことと、書くこと

2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

恋愛小説と恋愛観について

『神様のボート』/江國香織/新潮文庫/平成14年刊 引越す前は、江國香織の小説は文庫とハードカバー合わせて十冊くらい持っていた。吉本ばななも山田詠美も桐野夏生も宮部みゆきも、読みたくなったらまた文庫で買えばいいと思って、古本屋へ引き渡す山へご…

憲法と私

『落ち葉の掃き寄せ 一九四六年憲法−その拘束』/江藤淳/文藝春秋/昭和63年刊 中学校の社会科の教科書で現憲法の九条を読んだとき、私は「要するに、誰かを殺すか自分が殺されるかの二択に迫られたときは、自分が死ねってことなんだな」と理解した。それは…

少年の孤独、中年の孤独

『海辺のカフカ』上下/村上春樹/新潮文庫/平成17年刊 私たちが中学生だった頃にはなかった言葉の一つに「陽キャ/陰キャ」というものがある。私たち、というのは年子の姉と私のことで、中学生の頃の姉はまさに「陽気なキャラクター」だった。「今でも職場…

32年後の「心のノート」

『ネットで「つながる」ことの耐えられない軽さ』/藤原智美/文藝春秋/2014年刊 捨てられないノートが4冊ある。小学校高学年の2年間に担任の先生と交わした交換日記だ。教室の後ろのロッカーの上に専用のボックスがあって、一つは提出用、もう一つは返却…